木造(W造)と鉄骨造(S造)どっちがいい?おすすめはどっち?

日本における新築住宅の建築工法は、1~2階建ての一般的な戸建てでは、木造(W造)と鉄骨造(S造)の2種類になります。

いざ家を建てようと思った際に、木造(W造)か鉄骨造(S造)かといわれても、どちらで建てたらいいのか正直わからないと思います。

そこで今回は、木造(W造)と鉄骨造(S造)それぞれの基本的な特徴や、何を基準に選択すればよいか解説していきます。

引用:CIEL HOMEDESIGN
この記事でわかること

✔ 木造(W造)と鉄骨造(S造)新築住宅での割合は

✔ 木造(W造)と鉄骨造(S造)それぞれの特徴

✔ 木造(W造)と鉄骨造(S造)どちらを選ぶべきか

目次

新築住宅における工法別割合

国土交通省の令和4年の資料によると、新築住宅の木造住宅の割合は、1~2階建てで87.6%、3階建てでも53.3%が木造で建てられています。
(出典:国土交通省「新築建築物に占める木造建築物の割合」

また、木造住宅における工法別割合は、在来軸組工法が78.8%と一番多いです。
(出典:林野庁「令和4年度森林・林業白書」

木造(W造)

木造住宅の建築工法には大きく分けて、『在来軸組工法』と『木造枠組壁工法(ツーバイフォー(2×4)工法)』の2種類があります。

前述しましたが、木造住宅における工法別割合は『在来軸組工法』が78.8%と一番多いです。

引用:HOME4U

在来軸組工法

日本に長く伝わる木工法を基に発展、定着した建築工法です。

基本的に、コンクリートの土台の上に垂直方向の「柱」と水平方向の「梁(はり)」、斜め方向の「筋交い」で軸組を造り、家を仕上げます。

近年では、耐力壁の「筋交い」に「耐力面材」を併用する住宅会社も増えてきています。

特徴

  • 柱や梁の位置によって、空間のカタチやサイズを自由に決められ、設計上の自由度が高く狭小地や変形地でも土地の形状に合わせて敷地を有効に使いやすい。
  • リフォームの際、増築や減築、間取りの変更などが可能。
  • 工務店あるいは大工の知識や技術で品質のバラツキがある。
  • 現場での作業が多いため、工期は長めになる

木造枠組壁工法(ツーバイフォー(2×4)工法)

アメリカから伝わった建築工法がツーバイフォー工法です。

角材で構成した枠組にパネルを取りつけた面材を、壁・床・天井の6面に用いるため、「木造枠組壁工法」とも呼ばれています。

使用する「2インチ×4インチ」の角材が名称の由来で、角材のサイズに応じて名称も「2×6」「2×8」と呼ばれる場合もあります。

特徴

  • 1つの面材のサイズが決まっているため、設計上の自由度が低い。
  • リフォームの際、増築や減築、間取りの変更が難しく、可変性が低い。
  • 工場で規格化されたパネル(面材)を使用するので、品質のバラツキが少ない。
  • 工場で作られたパネル(面材)を現地で組み立てるので、短期間で完成させることができる。

在来軸組工法と木造枠組壁工法の比較

スクロールできます
在来軸組工法木造枠組壁工法
設計の自由度高い低い
リフォーム可変性が高い可変性が低い
施工できる住宅会社多い少ない
品質の安定性低い高い
工期長い短い
費用高くなりがち低く抑えれる

鉄骨造(S造)

木造以外で建物を建築する方法は、鉄骨造(S造)、鉄筋コンクリート造(RC造)、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)があります。

構造のイメージとしては、下図のような違いになります。

引用:SUUMO

一般住宅では、ほとんどが木造もしくは鉄骨造(S造)ですので、今回は鉄骨造(S造)のみ解説します。

鉄骨造(S造)住宅は柱や梁に鉄骨を使用している住宅です。

鉄骨には重量鉄骨と軽量鉄骨の2種類があり、鉄骨の厚さ6mm以上を重量鉄骨、鉄骨の厚さ6mm未満を軽量鉄骨といいます。

鉄骨造(S造)の一般住宅では軽量鉄骨を採用されることが一般的で、採用できる住宅会社は全国展開しているような大手ハウスメーカーしかありません。

鉄骨造(S造)住宅に採用される主な工法は、「軽量鉄骨ブレース工法」「重量鉄骨ラーメン工法」などがあります。

軽量鉄骨ブレース工法

引用:HIROSHIMA REFORM

柱や梁には軽量鉄骨を使用し、筋交いには「ブレース」と呼ばれる鋼製の棒を使用し、強度を出す工法です。

在来軸組工法の鉄骨版と考えるとわかりやすいと思います。

前もって主要部材を工場で生産し、それを現場で組み立てて設置する場合が多く「軽量鉄骨プレハブ工法」や「プレハブ住宅」と呼ばれることもあります。

重量鉄骨ラーメン工法

引用:ID3池田建設

ドイツ語で「ラーメン=枠」を意味する言葉で、ラーメン工法では柱と梁を剛接合して枠をつくり組み立てていきます。

ラーメン工法は筋交いや耐震壁が必要ないので、大きな窓や広い空間をつくることができ、間取りの自由度が高い構造です。

狭い土地で広さが限られているところに3階建てや4階建てを建てるケースや、1階を広い駐車場にしたいといったケースもあり、一般住宅でも重量鉄骨が選ばれる場合があります。

重量鉄骨なら強度が高い分、少ない柱の本数での家づくりができます。

木造(W造)と鉄骨造(S造)どちらを選ぶべきか

木造と鉄骨造の比較

木造(W造)鉄骨造(S造)
強度
耐震性
地盤補強(改良)の可能性
耐火性・防火性
断熱性
気密性
性能や品質のムラ
シロアリリスク
設計の自由度
1m2当たりの工事費用(全国平均)17万7000円27万2000円
法定耐用年数(住宅用建物)22年重量鉄骨造 34年
軽量鉄骨造 27年
建物躯体の寿命の目安40~50年60~70年
強度

木と鉄骨では、材料単体としての強度では差があります。
ヤング係数(強度や弾性を表す指標のひとつ)を比較すると、鋼材:205,000[n/mm²]、木材:7,000~12,000[n/mm²]という差があります。

耐震性

強度が強い鉄骨の方が地震に強いイメージをもっていませんか?
しかし、建物が地震から受ける力は、建物の重さや高さに比例します。
つまり、総重量が軽い木造住宅のほうが地震のときにかかる力が小さくなりますので、鉄骨造住宅の方が耐震面では不利になります。
しかし、鉄骨住宅を施工している大手ハウスメーカーでは、制震や免震を強化した独自の工法などで、地震に強い家づくりをしています。
どちらも耐震等級3を取得していれば、学校や消防署と同等レベルの耐震性能になるので、比較してどちらかが見劣りするということはありません。

地盤補強(改良)

木造は鉄骨造より総重量が軽いため、地盤への負担も少なくて済みます。
ですので地盤補強なしで建築できたり、軽度の地盤補強で済むケースが多いです。
鉄骨造の方が地盤補強工事のコストがかかる可能性は高まります。

耐火性・防火性

木造と鉄骨造どちらも一定水準以上の耐火性は確保できます。
ところが、実際に火災が起こってしまった場合に、倒壊リスクの差が出ます。
木材は燃えやすく鉄骨造と比べれば、火災に弱いというイメージをもつ人が多いと思います…
しかし、木材が燃えやすいのは外側の部分のみで、木の中心部はまわりに炭化層ができるため、鉄骨造より強度が低下しにくく、倒壊しにくい、という特徴があります。
火災が起きたとしても住宅のかたちが残りやすく、人命救助がしやすいです。
逆に鉄骨造は、鉄骨の柱などが熱で曲がり倒壊しやすい、という特徴があります。
軽量鉄骨は700度以上で曲がり始めるそうです。
火災では1200度ほどになるといわれていますので、大規模な火災では木造よりも早く倒壊してしまうでしょう。

断熱性

鉄骨は木材と比べて、熱伝導率が高いというデメリットがあり『熱橋(ヒートブリッジ)』を起こしてしまいます。
鉄骨部分が外気の熱(暑さ・寒さ)を室内側に伝えてしまう現象のことを『熱橋』と呼びます。
ですので、鉄骨造ではしっかりとした熱橋対策をしないと、断熱性能の低下させてしまいます。

気密性

鉄骨造は木造に比べて気密性能を上げにくいと言われています。
木造と比べて気密がとりにくいのは、気密シートが張りづらかったり、気密部材が金属に対し機能しにくいなど、様々な理由があります。
高気密住宅とは一般的に「C値=1.0以下」とされることが多いですが、そもそも鉄骨系住宅を建てているハウスメーカーではC値を公表していない会社がほとんどです。
私が確認できたセキスイハイムの鉄骨系住宅では「C値=2.0以下」が基準値になっていました。
しかし、木造だからといって必ずしも気密性能が高いわけではなく、住宅会社の知識や技術によって気密性能が低い場合があるのも事実です。

性能や品質のムラ

鉄骨造を採用できる住宅会社は全国展開しているような大手ハウスメーカーしかありません。
大手ハウスメーカーならではの大規模な工場や設備、物流などで、性能や品質は安定した家づくりができる。
一方、木造住宅は現場作業が多く、住宅会社の知識や技術によって性能や品質のバラツキが多い傾向にある。
しかし、木造住宅でも2×4工法は、鉄骨造のプレハブ住宅と同じように、工場で加工し現地で組み立てるため現場作業が少なく、性能や品質のバラツキは少なくなる。

シロアリリスク

鉄骨造といっても構造躯体以外には、木材が使用されるためシロアリ被害はゼロにはなりません。
しかし、構造躯体が鉄骨なので、シロアリ被害によって倒壊することはないです。
木造の場合は、シロアリにより柱などの構造躯体が食害を受けてしまうと倒壊してしまう可能性があります。

設計の自由度

木造は、狭小地や変形地でも土地の形状に合わせて設計できたり、将来的に改築したりといった自由度が高い。
鉄骨造はプレハブ工法なので、規格サイズが決まっており設計上の自由度は低い。
しかし、鉄骨は木材と比べると強度が高いため、大開口や大空間を作りやすいといったメリットがあります。

工事費用

令和5年のデータでは、1m2当たりの工事費用(全国平均)は木造で17万7000円、鉄骨造で27万2000円となっており、鉄骨造の方が高い傾向にあります。
(出典:国税庁「地域別・構造別の工事費用表(1m2当たり)令和5年分用」

法定耐用年数(住宅用建物)

法定耐用年数(※実際の建物の寿命とは異なる)は、木造の場合22年であるのに対し、軽量鉄骨造の場合は34年と、鉄骨造のほうが木造よりも長くなります。
それにより、資産価値の面から考えれば、鉄骨造の方が有利になります。

建物躯体の寿命の目安

きちんとしたメンテナンスされているかや、立地条件によって建物の寿命は変わりますが、木造で40~50年、鉄骨造で60~70年といわれており、法定耐用年数より長く住み続けられます。
しかし雨水や紫外線の対策の他に、木造の場合はシロアリ対策、鉄骨造の場合は鉄骨材の錆び対策などを特にしっかり行うことが前提になります。

木造が向いている人

  • 高性能な家を建てたい人
    世界基準の高性能な家づくりをしたい人は、木造が絶対になります(日本の住宅性能は世界と比べて、かなり劣っています)。
    特に気密性能の差が大きく、鉄骨造では高気密住宅は難しいです。
    しかし、工務店など住宅会社ごとの知識や技術の差が大きく、性能的には20~100点と幅の広い家づくりになります。
    住宅会社選びを失敗してしまうと、欠陥住宅を建ててしまうリスクがあるため、施主自身もある程度の勉強が必要になってきます。
  • 他人と同じような家を建てたくない人
    鉄骨造を施工する大手ハウスメーカーでは、住宅のサイズや間取りが規格化され、使用できる建材も限られていることが多く、ハウスメーカーの特色が出て、どれも似かよった見た目の家になってしまいます。
    一方、木造(在来軸組工法)は設計の自由度も高く、様々な建材が使用できることが多いため、個性を出した家づくりができます。
  • 建築費用を抑えたい人
    令和5年のデータでは、1m2当たりの工事費用(全国平均)は木造で17万7000円、鉄骨造で27万2000円となっており、木造の方が建築費を安くできる傾向にあります。

鉄骨造が向いている人

  • 高性能ではないが一般的な性能の家を確実に建てたい人
    鉄骨造を採用できる住宅会社は全国展開しているような大手ハウスメーカーしかありませんので、品質の管理や施工方法のマニュアル化などはしっかりされているので、欠陥住宅を建ててしまうリスクは限りなく低いと思います。
    しかし、性能的には60~70点くらいの家になると思いますので、超高性能な家づくりはできないと考えていた方がいいです。
  • 安心感が欲しい人
    大手ハウスメーカーということでネームバリューもあり、地元の工務店などと比較すれば、会社の倒産リスクは低いので、将来的に安心して確実にアフターメンテナンスを受けれます
  • 家に解放感が欲しい人
    鉄骨の強度を生かし、大開口の窓を設けたり、柱のスパンを広くとり広い空間を作ることができます。
    解放感のあるリビングや、どうしても大きい窓が必要な人は鉄骨造がおすすめです。
  • できるだけ工期を短くしたい人
    プレハブ住宅といわれるように、主要部材を工場で加工し現地で組み立てるため現場作業が少なく、工期が短くできる場合が多い。
    建て替えなどで、できるだけ工期を短くしたい人にはおすすめです。
  • 資産価値
    法定耐用年数は、木造の場合22年であるのに対し、軽量鉄骨造の場合は34年と、鉄骨造のほうが木造よりも長くなります。
    それにより、資産価値の面から考えれば、木造に比べ鉄骨造の方が資産価値が下がりにくいです。
    しかし、同じように家の固定資産税の評価額も下がりにくくなるため、税金も少し高く払う期間も長くなってしまう側面もあります。

まとめ:施主目線で思うこと

結論から言うと、私は木造で建てることを強くおすすめします。

理由は、鉄骨造では高性能(世界基準で考えれば一般的)な家づくりが難しいからです。

鉄骨造では、高断熱化は改善されてきている印象ですが、特に気密性能の低さが致命的です。

当サイトで何度も書いてますが、高断熱と高気密はセットで考えなくては意味がありません。

多くの鉄骨造を扱うハウスメーカーでは、気密を表すC値の基準や測定値を公表していない会社が多いです。

私が調べた限り、『セキスイハイム』ではC値の基準を2.0として、完成時に気密検査を全邸行い引き渡しをしているようでした。

しかし、C値=2.0というのは全く高気密とは言えませんし、他の鉄骨系ハウスメーカーはもっと悪い可能性もあります。

近年では省エネの観点から住宅性能の見直しが進んでいて、将来的に日本でもC値の基準が定めらる日が来るかもしれません。

そうなれば、未来の建築基準以下の家を建ててしまうことになります。

今後、環境面への関心などから住宅性能向上は加速していくことが予測されますので、少しでも高性能な家づくりを行ってください。

また、鉄骨系ハウスメーカーは建築費用が高額な場合が多く、同じ金額で木造住宅を建てれば、超高性能住宅になると思います。

高額で性能の低い鉄骨造住宅より、予算も抑えれて高性能な木造住宅を強くおすすめします。

ですが、一つ注意しないといけないのが、木造住宅は住宅会社の知識や技術によって性能のバラツキが大きいため、住宅会社選びが重要な点は忘れないでください。

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