構造計算とはなにか、わかりやすく解説!

この記事でわかること

✔ 構造計算とは何か

✔ 四号特例とは何か

✔ 構造安全性の確認方法(仕様規定・性能表示計算・許容応力度計算)

✔ 構造計算(=許容応力度計算)の必要性

目次

構造計算とは

構造計算とは、建物の構造部分に掛かる自重や積載荷重の他、多様な外力(地震力・積雪・風圧・土圧など)に対して、構造部材の応力(建物内部に生じる抵抗力)や変形を計算し、安全であることを確かめることを構造計算と呼びます。

これは建物の構造安全性を科学的に検証し確認するための計算です。

通常、「建築確認申請」の際には、耐震性を確認するための構造関係図書の提出が義務づけられています。

しかし、「四号特例」などで構造関係図書の提出を省略できるケースが存在します。

「建築確認申請」と「四号特例」について少し解説します。

建築確認申請

新しく建物を建てる場合または一定の増改築等をする場合には、法律を守った設計であることを行政にチェックしてもらう「確認申請」が義務付けられています。

建築確認は基本的には、着工前と完成後の2回審査が行われます。

全体の大まかな流れとして下記の通りです。

  • 設計
  • 事前相談
  • 建築確認申請
  • 建築検査機関や特定行政庁による審査(1回目)
  • 「建築確認済証」の発行
  • 工事着工
  • 工事完了
  • 工事完了の届出
  • 検査(2回目)
  • 「検査済証」の発行

この時、発行された「建築確認済証」と「検査済証」は必ず大切に保管しましょう。

「建築確認済証」
金融機関から融資を受ける時や、不動産登記を行う時に必要になります。
また将来その建物を増改築する時や、売却する時にも必要になります。

「検査済証」
その建物を売買する時や、増改築で新たに建築確認申請する際に必要になります。
売買する時になくても契約は成立しますが、違反建築物と判断されると買主が金融機関で融資を受けることが難しくなり、売却価格が下がったりと売却時にハンデになる可能性があります。

四号特例

建築基準法第6条第1項に、構造種別、用途、規模などにより建築物は一号から四号までに分類されています。

木造建築で、

  • 2階建て以下
  • 延べ面積500㎡以下
  • 高さ13m以下
  • 軒の高さ9m以下

この条件に当てはまる建物を「四号建築物」といい、多くの一般住宅がこれに分類されます。

通常、建築確認申請の際には、耐震性を確認するための構造関係図書の提出が義務づけられています。

しかし、四号建築物については、建築士が設計・計算を行うのであれば、構造関係図書の提出を省略できることになっており、これを「四号建築物の特例」=「四号特例」などと呼ばれています。

大事なポイントは「構造関係図書の提出を省略できる」=「構造計算しなくていい」ではない、ということです。

四号特例の見直し

「構造関係図書の提出を省略できる」=「構造計算しなくていい」と四号特例を誤認し、構造計算を行っていなかったり、あるいは構造計算には時間と費用のコストがかかるため故意に構造計算されていない建物が多くあるのが現状です。

この実態を踏まえてか、2022年通常国会で「四号特例」の縮小案を含む改正建築基準法が成立しました。

実施はまだ先ですが、2025年度には一般的な木造住宅においても構造関係図書の提出が義務化される見通しです。

これについて…

『四号特例見直し → 仕様規定の廃止 → 構造計算(許容応力度計算)必須』

と勘違いされてる方が多いですが、実際は…

『四号特例見直し → 構造関係図書の提出義務化 → 仕様規定でも可』

です。

出来ることなら、構造計算(許容応力度計算)必須かつ提出義務化になってほしいものですが…。

法改正前に、四号特例で確認申請を進められている方は、一度、設計者にその計算内容の確認をすることをオススメします。

木造住宅での構造安全性の確認方法

建物の構造安全性を確認する方法は3つあり、

  • 仕様規定(壁量計算、四分割法、N値計算)による確認(建築基準法)
  • 性能表示計算による確認(品確法)
  • 許容応力度計算による確認(構造計算)
引用:チカラボ

仕様規定・性能表示計算・許容応力度計算の3つを、ひとまとめにして「構造計算」と呼ばれることもあります。

今回の記事は「許容応力度計算=構造計算」として理解ください。

仕様規定(壁量計算、四分割法、N値計算)による確認(建築基準法)

仕様規定はすべての木造建築物に適用され、建築基準法上、最低限行わなければいけない構造安全性の確認方法です。

仕様規定は、3つの簡易計算と8項目の仕様ルールで構成されています。

○3つの簡易計算
①壁量の確保(壁量計算)
②壁の配置バランス(四分割法)
③柱の柱頭柱脚の接合方法(N値計算法)

○8項目の仕様ルール
④基礎の仕様
⑤屋根ふき材等の緊結
⑥土台と基礎の緊結
⑦柱の小径等
⑧横架材の欠込み
⑨筋かいの仕様
⑩火打材等の設置
⑪部材の品質と耐久性の確認

仕様規定では簡易計算として①②③を規定しているだけで、その他、木造住宅の骨組みとなる「柱や梁等の部材検討」、木造住宅を支える「地盤・基礎の検討」は仕様のルールが決められているだけで、建物ごとに安全性の計算をする規定ではありません。 

要するに仕様規定は耐力壁に関する計算・検討は行うが、部材・地盤・基礎に関しては仕様ルールの確認のみで計算・検討は行っていないということです。

注意してもらいたいのは、仕様規定での構造設計は、構造計算ではありません

仕様規定に含まれる耐力壁の量を決定するプロセス(簡易計算)であり、住宅業界には「壁量計算」を「構造計算」であると勘違いしている人も大勢います。

性能表示計算による確認(品確法)

品確法で規定されている住宅性能表示制度による計算で、仕様規定の壁量計算に加えて、床・屋根倍率の確認と床倍率に応じた横架材接合部の倍率も検討します。

住宅性能表示計算では耐震等級2以上が保証されるので、 長期優良住宅認定やハウスメーカーはこの計算で耐震等級を導き出しているケースが多いです。

2022年10月より前は、構造計算を行わない場合でも耐震等級2以上なら長期優良住宅の認定が取れました。

しかし、2022年10月に法改正があり、それ以降は構造計算を行わない場合だと、耐震等級3でないと長期優良住宅の認定を取れなくなりました。

許容応力度計算による確認(構造計算)

部材が外部からの力に耐えられるか、構造計算ソフトを用いて柱・梁・接合部の全てにおいて安全性を確認します。

3つの確認方法の中でもっとも詳細な計算方法で、複雑で手間も時間もかかります。

構造計算ソフトを用いて以下の検討項目を確認します。

  •  壁量計算
  •  壁の配置バランス
  •  水平構面
  •  柱頭柱脚の接合方法
  •  柱や梁、横架材など部材検討
  •  基礎設計
  •  地盤調査
  •  地盤補強工事 

構造安全性の確認方法の違いによる大きな差

一般的な木造住宅を建てるときは、法律上は必ずしも構造計算(=許容応力度計算)を行う必要はありません。

構造計算を行わない場合は、代わりに壁量計算という簡単な計算を行います。

しかし、壁量計算は構造計算に比べて計算方法がかなり簡略化されているため、ざっくりした計算しかできません。

例えば、耐震を考えるときに、建物の重量はとても大切です。

地震が来たとき、建物が重ければ重いほど大きな力を受けるので、耐震壁を増やす等の対策が必要になります。

建物の重量を計算するとき、
構造計算 ⇒ 屋根や壁など1つ1つの材料の重さを足して計算
壁量計算 ⇒ 建物の面積から簡単に重量を計算

重量計算一つだけを見ても、これだけの差があります。

近年では、高性能住宅が普及してきたことによって、住宅の重量が昔よりも重くなってきています。

高性能住宅は、厚い断熱材を使ったり太陽光パネルを載せたり、場合によっては全館空調が入ったりしているため重量が重くなるのは必然です。

これからの高性能住宅づくりでは、構造計算なしでは構造安全性に不安がつきまといます。

なぜ、許容応力度計算にこだわるのか

理由は一つ。
同じ耐震等級3であっても、性能表示計算で建てた家よりも、許容応力度計算を行った家の方が地震に強いからです。

耐震等級3の落とし穴

実際に耐震等級3で同じような家を設計する場合、性能表示計算(=壁量計算)と構造計算(=許容応力度計算)では、詳細な作業を必要とする構造計算の方がたくさんの耐力壁を必要とする計算結果が出ます。

性能表示計算で建てた耐震等級3が、構造計算と同じ量の耐力壁を必要としているなら違いは無いでしょう。

しかし実際は耐力壁一つだけを見ても、構造計算よりも常に少なくなるのが性能表示計算の現状です。

計算方法の違いによる耐力壁量を比較したシミュレーション結果がありましたので、紹介します。

前述した通り、同じ耐震等級3でも、性能表示計算と構造計算では耐力壁量の差があります。

驚くべきは、性能表示計算の耐震等級3は、構造計算の耐震等級2と比べても耐力壁量が劣るという結果です。

最高等級(耐震等級3)という数字だけで判断するのではなく、命と財産を守るという目的で考えれば、構造計算(=許容応力度計算)は必須になることが自ずとわかると思います。

まとめ:施主目線で思うこと

許容応力度計算の必要性

今回は「構造計算=許容応力度計算」として重要性を解説してきました。

しかし、仕様規定・性能表示計算・許容応力度計算の3つを、ひとまとめにして「構造計算」と呼ばれることもあります。

その場合は、建築基準法を最低限守った仕様規定を基に建てた家でも堂々と「構造計算しています!」と言って、誤解を与えたまま住宅を販売する業者も多く存在します。

とはいえ、許容応力度計算をお願いすると数十万円のコストが掛かるのも事実です。

ですが、構造の安全性を担保できない家を建てるのは、どうなのでしょうか?

近年では、様々な震災を経験し、地震保険に加入する方も年々増えています。

地震保険には加入し、許容応力度計算は費用がかかるのでケチってしまう、または知らずに家を建ててしまう…。

地震は怖いから地震保険で万が一に備えるが、構造安全性は不安な家を建てることになり、本末転倒な気がします。

これは自動車に例えると、事故が怖いから任意保険には加入するが、ずっと無車検の車に乗っているようなものです。こんな事は実際できないですが…。

ですので、新築を検討する際や住宅を購入する際は必ず許容応力度計算をしているか確認してください。

許容応力度計算の落とし穴?

これから家づくりをされる方は構造計算(=許容応力度計算)は絶対必須で行ってほしいですが、構造計算がされていればどの住宅会社でもいいのでしょうか?

結論から言うと、同じ構造計算でも住宅会社によって建物の強度には差がでます

構造安全性を確認する際、普段から構造計算を標準で行う会社と、お願いされたから仕方なく構造計算をする会社では、当然のように知識や技術に差がでます。

知識の少ない会社の悪い事例をみてみると…

・柱や梁の太さや位置決める「スパン表」も使用しないで構造計算

本来、必要な場所に柱がないまま、無理やり構造計算をギリギリ通している事例
間取りの要望を聞くために、柱を飛ばし無理に太い梁などで対処しているケースなどは、もちろん建物の強度が落ちます

・基礎の構造計算はしていない

構造計算をしているアピールをしているが、実際は建物の構造計算だけを行い基礎の構造計算はしていない事例
これは基礎の地中梁や配筋量を減らし、コストカットしている悪質なケースが多いです
建物の強度が良くても、基礎が弱くては意味がありません

クリフ

構造計算が、必ず建物と基礎のセットで行われているか確認しよう!

このような事例を防ぐために、構造計算をしてくれる住宅会社が見つかったら、「スパン表」や「配筋検査」などについて質問するといいかもしれません。

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