✔ 内部結露とは何か
✔ 内部結露の原因と対策
✔ 結露計算の重要性
✔ 夏型結露と冬型結露
「内部結露」と「表面結露」
住宅における結露は「内部結露」と「表面結露」があります。
- 内部結露・・・壁の内部、床下、天井裏など見えない場所に発生
- 表面結露・・・窓のガラスやサッシなど見える場所に発生
「内部結露」は断熱材や木材などを腐食させる原因になり、住宅の耐久性を低下させ寿命を縮めてしまいます。
他にも、カビやダニの発生原因になるため、最悪の場合、喘息やアレルギー症状などの健康被害も原因にもなります。
「表面結露」も周辺木材の腐食や、カビやダニの発生原因にはなりますが、目に見える場所なのでこまめに拭き取ることで対処できます。
しかし「内部結露」は見えない場所に発生するため発見が遅れるケースが多く、断熱材や木材の腐食が進んでいると大掛かりな修繕が必要となる場合もあります。
内部結露の原因と対策
結露のメカニズム
空気は温度によって含むことができる水蒸気の量(飽和水蒸気量)が決まっています。
暖かい空気ほど沢山の水蒸気を含むことができます。
水蒸気を多く含んだ暖かい空気が温度の低い場所に移動したり、冷たい部分に当たることで温度が下がると、含むことができる水蒸気量が少なくなります。
含むことができなくなった水蒸気が、結露という形で出てきます。
内部(壁内)結露の原因
壁の構造
そもそも壁がどういう構造になっているのか見てみましょう。
湿気や雨水が、断熱材などの構造材内に侵入しないように対策されています。
内部結露において、特に重要になるのが「透湿防水シート」「通気層」「防湿気密シート」です。
- 「透湿防水シート」…室外側からの雨水や水蒸気などの湿気を通さない役割。(防水)
また万が一侵入した湿気を室内側からのみ通気層へ排出する役割。(透湿) - 「通気層」……………万が一侵入した湿気を乾かすための換気の役割。
- 「防湿気密シート」…室内側からの暖かく湿った空気を通さない役割。(防湿)
湿気だけでなく空気そのものを通さない役割。(気密)
壁内結露の原因
空気は水蒸気量(絶対湿度)が高い方 → 水蒸気量(絶対湿度)が低い方へ流れる性質があります。
住宅では、冬は室内から室外へ移動し、夏は室外から室内へと移動してきます。
暖かく湿った空気が壁内、床下、天井などへ移動する際、室内と室外の温度差によって急激に空気が冷やされ、露点に達してしまい結露してしまいます。
内部(壁内)結露の防止対策
①結露対策を考えた正しい施工
「透湿防水シート」「防湿気密シート」の途切れやヨレなどによるスキマがないように、シートとテープでしっかり連続して施工する。
「通気層」をしっかり確保し、層が下から上まで連続していて、湿気がしかっり抜けるように施工する。
②温度・湿度をコントロールする
室内の温度・湿度のコントロールや、24時間換気システムを常時稼働させておく。
湿気を含む淀んだ空気が滞留する場所ができないように、設計段階でしっかりした換気計画をする。
③気密性能の高める
高断熱住宅になれば室内外の温度差が大きくなるので、気密の重要性が増し、結露リスクが増加する隙間をなくすことで壁内部に空気(湿気)を侵入させない。
④結露計算をする
それぞれの材料の熱伝導率や透湿比抵抗に基づいて壁内外の温度差と水蒸気圧差を求め、水蒸気の移動をシミュレーションし、結露するリスクと程度を予測することができます。
建築エリアで条件設定が異なるため、一棟一棟計算する必要があります。
⑤外張り断熱を採用する
外張り断熱構造では、温度差が大きい場所(露点になる場所)が主に構造材の外側で起こります。
よって万が一、室内側の湿気が室外側に漏れた場合でも、壁内で結露が起きる可能性が、極めて小さくなります。
しかし、外壁が厚くなったり費用が割高になるなどのデメリットもある工法なので、採用する際は要検討。
結露計算とは
構造材(断熱材・シート・合板など)の熱伝導率や透湿比抵抗などから、合板やシートを使用するかしないか、また構造材の種類や厚さを変更して壁内で露点に達しないように、設計段階で計画されます。
これを『結露計算』といいます。
全く同じ家でも、建築エリアで条件設定が異なるため、一棟一棟計算する必要があります。
下図は結露計算ソフトの一例ですが、建材の熱伝導率・透湿比抵抗・厚さ、地域や気象条件など様々な条件を入力すると、内部結露判定ができます。
結露計算時に使用する内部結露判定グラフは、実際の温度と露点温度の変化をグラフ化したものです。
下図は結露判定改善の例ですが、内部結露判定が不合格だった設定条件を
・断熱材を透湿比抵抗の高いものに変更する
・防湿気密シートを使用していない場合は使用する
などの条件変更をし、内部結露判定が合格するように設計していきます。
室温と露点温度の2つの線が交わらずに離れていれば、理論的には内部結露しないということになります。
結露計算は「冬型結露」と「夏型結露」の2パターンで、それぞれ判定します。
また、気象条件は少し厳しめな条件で判定することをおすすめします。
冬型結露と夏型結露とは
同じ壁内結露といっても「冬型結露」と「夏型結露」があります。
窓が冬場に表面結露するように、内部結露も冬場に起きるものと思う方もいると思いますが、「夏型結露(逆転結露)」といって夏場でも内部結露は起こります。
前述したように、住宅では空気の移動が、冬は室内から室外へ移動し、夏は屋外から室内へと移動してきます。
夏と冬で、壁内の温度差が大きくなる場所が違ってくるために、結露する場所が変わってきます。
夏場に屋外と室内の温度差が大きい地域(温暖な地域)は夏型結露に特に注意が必要です。
例えば、すごく寒い地域の高性能の家を、そのままの性能で温暖な地域に建てると「夏型結露」が起こってしまうリスクが上がります。
ですので、しっかり結露計算して、その地域ごとにあった性能の家を建てる必要があります。
近年では「夏型結露」対策として、可変透湿気密シートという特殊なシートを使用するケースもあります。
これは年間を通して気密性はしっかりと確保しながら、壁体内の湿度条件に応じて、透湿性が変化する特殊な気密シートです。
壁体内の湿度が高い時だけ湿度を逃がしてくれる…
そんなことできるの!?
『可変透湿気密シート』すごい開発技術だね!!笑
これから先、地球温暖化が進んでしまうと「夏型結露」のリスクは上がるので、将来的な対策として可変透湿気密シートを検討するのもおすすめです。
まとめ:施主目線で思うこと
内部結露を防ぐには、断熱性能・気密性能を高め、計画的な換気を行い、断熱材の外側に通気層を設けるといった施工がポイントになります。
ですが「この断熱材は内部結露しません!」「この全館空調は内部結露しません!」といった言葉を言われたことがないでしょうか?
これらはセールストークでウソだと思ってください。
どんなに良い断熱材や設備を使っても、結露計算もせず施工方法も間違っている家だと、内部結露のリスクが高まります。
逆に安く建てた家でも、きちんと結露計算がされていて、しっかりした施工がせれていれば、内部結露のリスクは抑えられます。
地域によって結露計算の結果が変わりますので、しっかり一棟一棟、結露計算してくれる住宅会社を探してください。
長期優良住宅などの断熱関係の申請では結露計算が必要ですので、長期優良住宅を取得できる住宅会社は、結露計算をしているという判断材料の一つになると思います。
コメント