✔ 耐震等級とは何か
✔ 耐風等級とは何か
✔ 耐震等級・耐風等級の重要性
耐震等級
耐震等級とは
耐震等級とは、建物の耐震性能(=どれだけ地震に強いか)を表す指標です。
前提として、新しく建物を建てる場合、最低でも満たしていなければならない基準が、建築基準法で「耐震基準(耐震性の最低基準)」として定められています。
名称 | 年代 | 内容 |
旧耐震基準 | 1950年~ 1981年5月31日まで | 震度5程度までの地震で修復可能 倒壊なし |
新耐震基準 | 1981年6月1日~ 2000年5月31日まで | 震度6強~7の大規模地震で倒壊なし 震度5強程度までの中規模地震で軽度なひび割れ程度 |
2000年基準 | 2000年6月1日以降 | 新耐震基準に加え、 地盤調査の実施・接合部の金物使用・耐力壁バランスを規定 |
1995年の阪神・淡路大震災を受け、2000年に改正された基準が現在の「耐震基準」です。
この「耐震基準」の何倍までの地震に耐えられるか基準を定め、
- 耐震等級1 … 阪神・淡路大震災相当の地震の1倍まで耐えられる基準
- 耐震等級2 … 阪神・淡路大震災相当の地震の1.25倍まで耐えられる基準
- 耐震等級3 … 阪神・淡路大震災相当の地震の1.5倍まで耐えられる基準
と3つのレベルに分けられています。
建築基準法上、耐震等級1の家を建てれば良く、等級2以上はあくまで任意の基準になっています。
また、2000年5月31日以前に建築確認された家は、耐震等級1とはみなされません。
引用:LIXIL
過去の大震災からの教訓
引用:国土交通省九州地方整備局
1955年 | 阪神・淡路大震災 | 最大震度6 |
2004年 | 新潟県中越地震 | 最大震度7 |
2011年 | 東日本大震災 | 最大震度7 |
2016年 | 熊本地震 | 最大震度7 |
2018年 | 北海道胆振東部地震 | 最大震度7 |
2024年 | 能登半島地震 | 最大震度7 |
上記のように、ここ30年だけでこれだけの大地震が発生しています。
大震災のような震度6以上の地震は100年に1度起きるレベルだとされていますが、近年ではどうでしょうか…。
また、地震調査研究推進本部(文部科学省研究開発局地震・防災研究課)による、南海トラフ地震や首都直下地震の発生確率は、今後30年以内で70~80%程度、50年以内は90%程度とされています。
熊本地震から学ぶべきこと
2016年の熊本地震では、建築物に甚大な被害が発生しました。
引用:国土交通省
国土交通省の調査によると熊本地震で倒壊した木造住宅は全体で297棟あり、そのうち前震で倒壊したのは35棟、本震で倒壊したのは262棟でした。
なんと88.2%が2回目で倒壊したことになります。
熊本地震では、震度6以上の大きな揺れが立て続けに2回起きているため、耐震基準である耐震等級1の家でも、倒壊した家もありました。
耐震基準は1回の地震には耐えれても、その後の地震まで耐えることは考慮されていません。
ですので、1回の地震からは最低限、人命だけは守れるかもしれませんが、その後は迅速な避難が必要不可欠です。
熊本地震(最大震度7)では、住宅性能表示制度を利用した木造住宅のうち、耐震等級3に当てはまる建物に大きな損傷は見られなかったという調査結果も出ています。
引用:国土交通省
国土交通省の調査によると、現行の建築基準法に適合しているとされる木造建築物(耐震等級1)でも、2.3%(7棟)が倒壊、4%(12棟)が大破しています。
この、6.3%(倒壊+大破)という数字だけみて、耐震等級1でも十分だと思う方もいるかもしれませんが、人命に直結することなので、決して無視できる数字ではないと思います。
また、耐震等級1と耐震等級3とで無被害の割合を比べてみると、60.1%と87.5%ですので、27.4%もの違いがあります。
言い方を変えれば、耐震等級1では約40%の家が何らかの被害があるため、高額な修繕費がかかるということになります。
その一方で、耐震等級3の木造建築物にいたっては、倒壊も大破も0棟で、軽微な小破が2棟のみだったので、耐震等級3の耐震性と安全性の高さが証明されたといえます。
耐震等級3の必要性
家は5年・10年だけでなく、30年以上住み続ける方が多いと思います。
30年間で大地震が2回発生したら倒壊する家では、人命や今後の生活を守るには不十分です。
大地震が起きても軽く補修するだけで住み続けられる家と、倒壊は免れたけど家の大半が大破している家であればどちらが良いかは一目瞭然です。
資金面でも大破した家を直すのと少し補修するのとでは修繕費も大きく変わります。
また阪神淡路大震災、東日本大震災、熊本地震と続く地震の中で地震保険に加入する人は年々増えています。
耐震等級に応じて地震保険料の割引があり、等級によって割引率が異なります。
等級 | 割引率 |
耐震等級1 | 10% |
耐震等級2 | 30% |
耐震等級3 | 50% |
耐震等級を上げるためには耐力壁のバランスや枚数が重要になるので、プランが出来てからだと手遅れになります。
ですので建築士や営業担当に耐震等級3で建ててほしいと必ず事前に要望を伝えましょう。
免振・制振の違い
耐震と似た言葉で免震と制震がありますが、耐震とは意味が違いますので少しだけ解説します。
引用:戸建てリノベINFO
免震
建物と地盤を切り離すことで、地震の揺れを建物に伝えにくくする建物構造です。揺れそのものを軽減し、建物内・外の被害を最小限に抑えます。
例 … 免震ゴム、ボールベアリング
制震
特殊な装置を使用することで、地震の揺れを吸収する建物構造です。揺れを熱エネルギーに変換することで、吸収しています。
例 … 制震ダンパー、制震テープ
耐風等級
耐風等級とは
耐風等級とは、強風による風圧力に対し、建物の倒壊や損傷のしにくさを示したものです。
耐風等級は、『住宅の品質確保の促進等に関する法律』(品確法)で規定されている住宅性能表示基準の評価項目の1つです。
「耐風等級」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか?
日本では過去に数々の大震災が起こり、耐震性を重要と考える方は多いかと思います。
実際に耐震性を重要視する建築会社も多いため、「耐震等級」は耳にした事がある人は多いのではないでしょうか。
日本は地震大国であると共に、台風大国でもあります。
大地震は数十年に1回起きる可能性が示唆されていますが、台風は毎年発生します。
しかも年に数十回発生し、上陸する度に大なり小なりの被害を残していきます。
そんな台風や突風に対する対策、風圧力に対する強さの指標が「耐風等級」です。
- 耐風等級1 … 建築基準法を満たしたレベル
500年に一度発生する暴風(伊勢湾台風の名古屋気象台記録)の力に対して倒壊、崩壊しない程度
50年に一度発生する暴風(1991年19号台風の長崎気象台記録)の力に対して損傷しない程度 - 耐風等級2 … 建築基準法の1.2倍の強度
500年に一度発生する暴風(伊勢湾台風の名古屋気象台記録)の 1.2倍の力に対して倒壊、崩壊しない程度
50年に一度発生する暴風(1991年19号台風の長崎気象台記録)の1.2倍の力に対して損傷しない程度
引用:axsis
過去の台風からの教訓
耐風等級1(建築基準法レベル)は伊勢湾台風が基準になっていて、この時観測された最大瞬間風速約50m/sが耐風等級1の倒壊、崩壊しないレベルとなっていることがわかります。
耐風等級2であれば、計算上1.2倍の最大瞬間風速60m/sに耐えれるレベルだとわかります。
耐風等級が制定された2000年以降、どれくらいの最大瞬間風速が観測されているか見てみましょう。
沖縄は高頻度で、60m/s以上の最大瞬間風速を記録しているため除外しています。
年代 | 最大瞬間風速 | 地域 | 被害状況 |
2004年 | 67.6m/s | 静岡 | |
2004年 | 63.7m/s | 長崎 | |
2018年 | 58.1m/s | 大阪 | 関西空港が水浸しになった。同台風で和歌山県、鹿児島県、沖縄県、高知県でも55.0m/s以上の最大瞬間風速を観測 |
2019年 | 43.8m/s | 千葉 | ゴルフ練習場のネットを支える鉄柱13本が倒壊した |
気象庁のまとめによると、50m/s以上の観測記録があるのは全国9地点で、大半は地形的に風が強まりやすい山や、大型台風が襲来しやすい地域となっている。
しかし、温暖化の影響で、今後は日本付近に到達する台風の勢力が強くなると予測されており、50m/s以上の猛烈な風に見舞われる地域が広がる恐れがあるとされています。
耐風等級2の必要性
台風情報を見るときに「風速」と「最大瞬間風速」があると思います。
しかし、建築基準法では最大瞬間風速の記述はなくい、耐風性能の評価は基準風速(稀に発生する中程度の暴風時を想定した10分間の平均風速)で評価されています。
より強くなる最大瞬間風速で評価すべきと思うのですが…。
一般的に風速20m/s以上で車の運転が難しくなり、40m/s以上では家屋が倒壊する恐れがあると言われています。
基準風速は、日本の各地域ごとに30m/s〜46m/sの間で設定されています。
最大瞬間風速は基準風速の1.5~3倍程度と気象庁から報告されていますので、最低基準風速30m/sの場合、最低の1.5倍でも45m/s以上の最大瞬間風速を予想できます。
一番低く見積もって予想した最大瞬間風速でも45m/s以上ですので、地域や台風の進路によって最大瞬間風速がまだまだ大きくなる可能性があることを考えれば、耐風等級1(50m/s)では少し不安ではないでしょうか?
まとめ:施主目線で思うこと
耐震等級3・耐風等級2を取得するためには?
ここまで、耐震等級3・耐風等級2の重要性を解説してきました。
実際に耐震等級3・耐風等級2を取得するためには、どのような住宅会社を選べばいいのでしょうか?
最低でも下記の2点は確認しておきましょう。
- 構造計算を許容応力度計算で行っている住宅会社を選ぶ
- 耐震等級・耐風等級ともにチェックしてもらうように事前に伝える
建物が耐震等級3だからと言って、耐風等級2が満たせているとは限らないです。
耐震等級だけをアピールして、耐風等級は基準ギリギリみたいな住宅会社もありますので注意しましょう。
耐風等級2の計画は耐震等級3よりもハードルが高いと言われています。
しかし、構造計算をしっかりと許容応力度計算で行う事で、耐風等級も明確に判断することが可能となり、耐震等級3かつ耐風等級2を満たすことができます。
耐震等級を計算するソフトを使用すると自動的に耐風等級も算出される場合が多いので、同時にチェックして教えてもらうように、住宅会社の方へ必ず事前に伝えましょう。
災害保険より耐震等級3・耐風等級2が高コスパ?
耐震等級と地震保険
震災で地震保険が適応される場合、最大でも火災保険額の半額しか保証されません。
しかも、半壊や大破が適応されるケースは稀で、軽微や小破が適応されるケースがほとんどなので、保険金額が100万円以下になることが多いそうです。
前提として、お金に余裕があれば安心材料として地震保険に加入することは大賛成ですが、万が一の時『耐震等級』と『地震保険』の違いで、どうなるかシミュレーションしてみましょう。
①「耐震等級1で地震保険に加入しているパターン」と、②「耐震等級3で地震保険に加入していないパターン」で仮に大震災に見舞われてしまった想定で比較してみます。
① | ② | |
建築費 | 耐震等級1 | 耐震等級3(建築費200万円UP) |
震災時 | 大規模な修繕費(500万円) | 軽微な修繕費(20万円) |
地震保険 | 加入(2~3万円/年) | 未加入(保険料ゼロ) |
保険金 | 保険金(50~60万) | 保険金ゼロ |
災害を想定すると、耐震等級3はイニシャルコストが上がりますがランニングコストが良く、コスパが高いことが分かります。
極端なシミュレーションですが、耐震等級3は安全性を高めるだけでなく、ランニングコストや税制面で実はコスパが高い建物だと思うので、ぜひ耐震等級3は取得してもらいたいです。
耐風等級と風災保険
近年でいうと、2018年が台風などの風災保険の適応が多かった年になります。
火災保険適応が3万件/年なのに対し、風災保険適応は100万件/年でした。
火災や震災とは比べ物にならないほど風災は起こってますので、耐風等級2を取得し災害に備えるのは必然ではないでしょうか。
前述した地震保険と同じく、風災保険ではすべての被害をカバーできませんので、修繕費を抑えるためにもぜひ耐風等級2も取得してもらいたいです。
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