✔ 気密性能とはなにか
✔ C値とはなにか
✔ C値の重要性
✔ C値の確認方法(気密測定)とはなにか
気密性能について
そもそも気密とは?
気密とは、一般的には
・「密閉して気体の流通を妨げ、気圧の変化の影響を受けないようにすること(大辞泉)」
・「気体に対して密閉されていること(広辞苑)」
などの意味で使われる言葉です。
住宅において気密とは、「家の隙間をできるだけ無くし、家の中と外の空気の交わりを断ち切ること」になります。
気密の必要性
住宅の性能を評価する時に、「断熱性能」「省エネ性能」「気密性能」などを、よく耳にするかと思います。
「断熱性能」「省エネ性能」には国の基準があり、等級や数値で表すことができます。
しかし「気密性能」に関しては基準が無く(平成25年の法改正時になぜか削除され)、住宅会社によって施工にバラツキが激しいのが現状です。
最近の住宅は、高断熱化によって家の中を快適な温度に保つことが出来るようになりました。
しかし、代わりに発生した問題が「内部結露(壁内結露)」と呼ばれる、壁の中で発生する結露です。
内部結露とは、快適な室内の空気と湿気が隙間から壁の中に漏れ、外の空気とぶつかり温度差が生じた場所で結露してしまうことです。
窓やサッシの目に見える結露と違い、内部結露は発見することが難しく、壁内で断熱材がカビたり構造材が腐ったりと、家の寿命を縮めることに繋がります。
こうしたことから、一定以上の断熱性能を確保する場合は、同時に通気対策と気密対策が非常に重要になってきます。
気密を良くすることで、壁の中に漏れる空気をできるだけ減らすことができ、内部結露を防ぐことができます。
「気密性能」は国の基準がありませんが、「断熱性能」「省エネ性能」と同様に非常に大事なのです。
高気密住宅のメリット・デメリット
メリット
家の中の快適性が上がる
・外気の影響を受けずらく、年中快適な温度・湿度を保てる
・防音効果が高い
・隙間から冷気が入りにくく、床・足元が冷えにくい
健康被害のリスク低減
・効率的な換気ができる
・内部結露を防げる(カビ防止)
・外から汚染物質が入りにくい
・ヒートショックのリスクを減らせる
光熱費を抑えられる
・断熱性能を保て、冷暖房効率が上がる
デメリット
- シックハウス症候群の原因に
-
建材から発生した化学物質やハウスダストなどが原因で頭痛、めまい、吐き気などを発症するシックハウス症候群という病気があります。
このため、2003年より全ての居室で24時間換気が義務付けられています。
しかし、気密性能が高いと空気がこもりやすく、しっかりとした換気計画がされていないと、シックハウス症候群のリスクが高まる可能性があります。
- 内部結露リスク
-
気密施工をする際、気密層は連続していることが原則になります。
しかし、気密層が途切れたり、施工不良の部分があると、その一部分で空気の出入りが多くなり、集中的に内部結露が発生し、部分的な耐久性・耐震性の低下につながる可能性があります。
C値について
C値とは
「気密性能」を表す数値に、C値が使われています。
『C値=相当隙間面積』といい、家の面積に対して、どの程度の隙間が存在するのかを表した数値です。
隙間面積ですので、数値が小さい方が気密性能が良いことになります。
一般的に、C値=1.0以下が高気密住宅と呼ばれています。
C値を確かめるには
C値は、下記のようにして求められます。
C値 = 隙間面積(㎠) / 延床面積(㎡)
延床面積は計算で求められますが、隙間面積は計算では求められないので、実際に確かめるしかありません。
断熱性能を表す「UA値」や省エネ性能を表す「BEI」などは計算で求められますが、気密性能を表す「C値」は実際に一棟一棟を機械を使って測定して求められます。
これが気密測定と呼ばれています。
C値=1を例にすると、床面積1m²につき1㎠の隙間が家のどこかにあるということになります。
仮に延床面積が40坪(132m²)の建物で、C値=1.0だった場合、家の所々にある隙間を合わせると132㎠の隙間面積があることを意味します。
これは、ハガキ約1枚分の面積に相当します。
参考までに…
・ハガキ1枚 約148㎠(10㎝×14.8㎝)
・名刺1枚 約50㎠(9.9㎝×5.5㎝)
・切手1枚 約5㎠(2.55cm×2.15cm)
となりますので、延床面積40坪の建物の隙間面積は、
C値=1.0の場合は、ハガキ約1枚分
C値=0.5の場合は、ハガキ約0.5枚分
C値=0.3の場合は、名刺約1枚分
C値=0.1の場合は、切手約3枚分
となります。
気密測定について
気密測定の方法
下の写真のような専用の機械(気密測定器)で計測します。
この機械で家の中の空気を徐々に抜いていき、隙間が小さければ、外から入ってくる空気の量が少ないので、家の中の空気が薄くなっていき、気圧はどんどん下がっていくことになります。
家の中と外の気圧の差を利用して、その家にどの程度の大きさのスキマがあるのかを計算して求めます。
ちなみに気密測定では、大型の窓よりも基本的には小さな窓の方が好ましいとされています。
一般的に大きな引き違いの窓は気密性能が悪く、隙間のところから空気が漏れてしまいがちです。
ですので「小さな窓で気密測定を行うことで、大きな窓の気密性能を測る」というのが理想的と言えます。
気密測定の手順
住宅会社が、自前で気密測定器を所有している会社は少なく、気密測定は外部業者に依頼するケースが多いです。
依頼する場合は、決められた時間(2時間程度?)で、測定 → 手直し → 測定 → 手直し… を繰り返して気密性能を上げていきます。
気密測定は、ざっくり以下の手順で行われます。
家の中で測定ができそうな窓を探し、測定器を全て搬入します。
前述した通り、大きい窓よりも小さな窓の方が理想的です。
家の中の換気口をすべて養生テープで目張りします。
計画換気に必要な箇所はすべて塞ぎ、建てる上で必要のない隙間を計測します。
逆に窓など、目張りが必要ないところに目張りがされてないかチェック!
測定器周りを気密処理する。
外の圧力差をはかるためのチューブを出す穴を開けるので、そこもしっかり気密処理しているかチェック!
気密測定を行う前に外の風速を測る。
基本的に測定をおこなう際には、風速3m/s以下でなければいけないという規定があります。
当日の風速が規定内かチェック!
小さな窓も玄関の鍵もすべて施錠します。
ひとつでも閉め忘れがあると正しい数値が出ないのでチェック!
ここからは業者(プロ)にお任せして見守りましょう。
気密性が極端に悪かったり、C値が0.1を切るような超高気密の場合はエラーになるようです。
気密測定のタイミング・費用
タイミング
気密測定には「完成気密測定」と「中間気密測定」の2種類があります。
- 「完成気密測定」… 建物が完成した段階で計測
- 「中間気密測定」… ボードやクロスを張る前の気密施工が終了した段階で計測
住宅会社によって、2回とも測定する会社、1回のみ測定する会社、そもそも気密測定しない会社、など様々です。
気密測定する場合、一般的には1回のみ測定をする会社が多いと思います。
本来であれば、「完成気密測定」がその家の正式なC値になります。
しかし、既に完成してしまった建物を計測して、もし良くない数値だった時に手直しが難しいので、一般的には「中間気密測定」で計測します。
「中間気密測定」の場合だと、気密処理ができていない箇所や、貫通部周りなど、どこから隙間風が出ているか、手をかざして隙間の正確な位置を特定できるので気密処理の手直しが可能です。
費用
気密測定の大体の費用感は、1回の測定で5万~10万程度が多いかと思います。
気密測定を2回行うことが理想的ですが、コストが上がってしまうので測定は1回のみの会社が多いのだと思います。
気密測定結果の見方(C値・αA・n値)
気密測定の結果は、下記写真のように表示されます。
色々な数値があるので、施主(素人)には何を確認したらいいのか、わからないと思います。
ですので、最低でも確認してほしい3つの数値を紹介します。
C値・αA・n値 です。
順番に説明します。
- C値(相当隙間面積)
-
前述した通り、家の大きさに対してどの程度の隙間があるかを表します。
一般的に、C値=1.0以下が高気密住宅と呼ばれています。
写真の結果を例に見てみると、C値=0.4㎠/㎡ なので十分な高気密住宅だとわかります。
住宅会社が目標としているC値をクリアできているかチェックしましょう。
- αA値(総相当隙間面積)
-
実際にどのくらいの隙間が空いているかを面積で表示されます。
写真の結果を例に見てみると、αA=41㎠ なので、家の所々にある隙間を合わせると41㎠ の隙間面積があることを意味します。
ハガキ1枚=148㎠ ですので、41㎠=ハガキ約1/3枚分の隙間面積があることがわかります。
- n値(スキマ特性値)
-
n値はスキマの特性値となり、1.0〜2.0の間の数字で出ます。
同じ隙間面積でも、n値が1.0に近い場合は小さな隙間がいっぱいあり、2.0に近い場合は大きい隙間が存在するように判断します。
例えば、n値が2.0に近い数字が出たら「まだ手直しが必要な大きな隙間がある」という目安になります。
逆に、n値が1.0に近ければ近いほど、「もう埋められる隙間は少ない」と判断する目安になります。
n値=1.5ぐらいは、大きいスキマも小さいスキマもある、いわゆる一般的な物件と言えます。
気密欠損しやすい場所
施工の工程上、どうしても気密欠損しやすい(スキマができやすい)場所があります。
一部ではありますが、下記に紹介します。
- ①給気口・配管・配線が貫通している場所
-
洗面所・トイレ・キッチンなど水回りは特に貫通部が多いので、欠損部分を発泡ウレタンで埋めるなど貫通部の気密処理がしっかりされているか
コンセント・スイッチ・ダウンライトなど壁や天井を貫通させるものには、専用部材(気密BOXなど)があるので、それを使用しているか
- ②壁と床の取り合い、壁と天井の取り合い
-
巾木部分や化粧部材で隠されている取り合い部分は断熱気密層が途切れる部分のため、スキマをつくらないために、壁と床なら床面まで気密シートを被せてテープ処理され、気密層が連続しているか
壁と天井も同様に、折返し部分をテープ処理され、取り合いの気密層が連続しているか
- ③窓や玄関ドアなどの開口部
-
サッシや玄関が余裕をもって入れられるように大きめの空間が確保されているため、ピッタリ入らない分、しっかり専用の気密パッキンや気密テープでの気密処理がされているか
- ④断熱材の処理
-
袋入り断熱材を使用する場合は、接合する袋の耳が気密テープですべて処理されているか
充填断熱(内断熱)の場合は、断熱材が無理矢理詰め込まれたりスカスカだったりして、断熱材と柱の間にスキマができていないか
- ⑤気密シートの処理
-
気密シートがたるみなく張られ、シートとシートの間が気密テープでしっかり連続されているか
家を建てる際は現場で、これらをしっかりカバーできているか、確認することをおすすめします。
また、家づくり検討中の人も、構造見学会などに参加するチャンスがあれば、こういうところをしっかり気密施工できている会社かどうかで、会社選びの参考になると思います。
まとめ:施主目線で思うこと
高気密住宅のウソ・ホント
高気密住宅は「空気がこもって息苦しい!」「カビが生えやすい!」など、一度は聞いたことがないでしょうか?
これは、半分ホントで半分ウソだと思います。
実際、高気密で換気計画がしっかりしていれば、シックハウス症候群になったり、結露してカビが生えたりはしないと思います。
逆に、正確に換気計画を行うには、しっかり気密を高めないと、できません。
ですが、知識不足の住宅会社によっては、しっかりとした換気計画ができてなかったり、中途半端な気密でC値はそこそこで、n値は悪い場合は、一部で内部結露を起こしてしまったりは、あると思います。
あくまでこれは一部の誤った施工事例のため、これだけを見て間違った情報にダマされないようにしてください。
理想のC値
暖かい家にしたくて断熱性能だけを上げても、気密がとれていないスキマだらけの家では、スキマ風が入りこむ寒い家になったり、換気が不十分になりカビの生えやすい不健康な住宅になってしまいます。
一般的には、C値=1.0以下が高気密住宅だと言われています。
住宅会社選びの際は、断熱性能だけではなく気密はどの程度とれるか、C値=1.0を下回ることを約束できるかが最低条件だと思います。
しかし、家は年数が経過してくると、C値が低下するとも言われています。
原因としては、木材の乾燥収縮や、地震の揺れで部材にズレが生じたり、気密処理に使われるテープやパッキンの劣化などで、スキマができてしまうことが挙げられます。
ですが、専用の気密部材を使用したり、耐震性能を高めたり、経年変化しにくい家づくりのポイントを押さえている住宅会社が建てた家では、気密の低下は少ないと思います。
そのような住宅会社に出会えればいいですが、なかなか見つからないですよね…
ですので、将来的に気密の低下があることを前提に、気密はC値=0.7~0.5ぐらいを目標にするのがいいのではないでしょうか。
最後に、気密施工に関して大変参考になるブログ記事がありましたので、下記に紹介します。
家づくりの際や、住宅会社選びの際は参考にしてみてください。
日本住環境株式会社|【床の断熱気密編】構造見学会で見るべき3つのチェックポイント
https://www.njkk.co.jp/blog/?itemid=33&dispmid=764
日本住環境株式会社|【壁の断熱気密編】構造見学会で見るべき3つのチェックポイント
https://www.njkk.co.jp/blog/?itemid=138&dispmid=764
日本住環境株式会社|【天井の断熱気密編】構造見学会で見るべき3つのチェックポイント
https://www.njkk.co.jp/blog/?itemid=38&dispmid=764
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