断熱性能を判断するための3つの大事な値(UA値・Q値・ηA値)をわかりやすく解説!

この記事でわかること

✔ 断熱性能を判断するための、UA値・Q値を理解できる

✔ 日射の影響を判断するための、ηA値を理解できる

✔ UA値・Q値・ηA値の基準値

目次

UA値(外皮平均熱貫流率)とQ値(熱損失係数)

UA値・Q値とは

UA値とQ値は、どちらも住宅の断熱性能を示す指標で、建物内の熱がどれくらい外へ逃げやすいかを示す数値です。
数値が小さい方が性能が良いです。

数値を出す計算上で、異なる大きな点が2つあります。

UA値
Q値
  • 熱損失に換気を含まない計算
  • 床・壁・天井・開口部の合計で割る
  • 熱損失に換気を含む計算
  • 延べ床面積だけで割る

UA値
壁や天井、窓などの開口部もすべて含めた計算なので、より公平な評価が期待できる。

Q値
延べ床面積(吹き抜け含む)だけで計算するため、同じ部材・同じ条件で建てた家でも延べ床面積が広いと数値が小さくなり、性能が高く評価されてしまう。

2013年からは省エネルギー基準を達成しているかどうかの基準が、Q値からUA値へと変更になりました。
建築会社を検討する際の材料として、条件によって数値が変化するQ値ではなく、UA値で比較するのがおすすめです。
しかし、同じUA値の建物でも採用する換気システムの違いによって実際のランニングコストや住み心地には違いが出てきます。
換気システムも加味したうえでの断熱性能の評価が知りたい場合には、Q値も参考にするのが重要です。

クリフ

Q値は最近あまり使われないけど、性能にこだわるなら絶対確認が重要だよ!

UA値・Q値の基準値は後半に解説していますので、気になる方は最後まで読んでみてださい。

UA値とQ値の計算方法

UA値の計算方法

UA値〔w/㎡・k〕=各部の熱損失量の合計〔w/k〕÷ 外皮面積〔㎡〕

という計算式で求められます。意味としては、建物の中と外の温度差を1度と仮定したときに、外皮(建物の表面)1㎡当たりで、1時間当たりに平均して何wの熱が逃げるかを表します。


※「各部の熱損失量の合計」の求め方
各部の熱損失量の合計は、屋根(天井)の熱損失量、外壁の熱損失量、床の熱損失量、開口部(窓やドア等)の熱損失量、基礎等および土間床の熱損失量の全てを合計して求めます。
それぞれの熱損失量は、例えば外壁(下図-B)の熱損失量であれば、「外壁のU値×外壁の面積×温度差係数」で算出します。
U値とは、部位が熱量をどれだけ通すか(熱の逃げやすさ)を表した数値。温度差係数とは、隣接する空間からの影響を加味し、その熱損失量を補正するための係数です。

※「外皮面積」の求め方
外気と室内の温度環境が変わる部位(屋根、外壁、開口部、基礎等および土間床)の、建物全体の面積を全て合計して求めます。

引用:学ぼう!ホームズ君

Q値の計算方法

Q値〔W/m²・K〕=(各部の熱損失量の合計〔w/k〕+ 換気による熱損失量の合計〔w/k〕)÷ 延べ床面積〔㎡〕

という計算式で求められます。
意味としては、UA値と同じですが、熱損失量に換気も含む点、延べ床面積のみで割っている点が異なります。

ηA値(平均日射熱取得率)

ηA値とは

ηA値は家がどれだけ日射熱の影響を受けるかを示す指標です。
夏場の冷房期をηAC値冬場の暖房期をηAH値として平均日射熱取得率を表します。

ηAC値
値が高いと、夏場に太陽光の影響を受け、家の中が暑くなりやすいことを表します。
高気密、高断熱の家はいったん暖まってしまうと冷ますのに時間がかかります。
窓に庇や、シェードを取り付け日射を窓の外で遮ることが重要になってきます。
よく厚手のカーテンで日射をさえぎる方もいますが、熱自体は家の中に入ってきています。
熱をさえぎるのであれば必ず窓の外で遮断するようにしましょう。

ηAH値
値が低いと、冬場日射取得量が少なくなり、家の中が寒くなりやすいことを表します。
冬にはたくさんの日射を取り込んであげることにより暖房使用量の節約になります。
夏と冬の太陽の高度の違いを利用したパッシブ設計を心がけ、日射取得量を増やすことが重要になってきます。

ですのでηAC値<ηAH値になるのが基本です。

クリフ

UA値が良くてもηA値を無視すると、夏はオーバーヒート、冬は日射取得量の不足などの原因になり、快適性が損なわれ光熱費も上がってしまうよ…

ηA値の計算方法


ηA値 = (①+②の合計日射取得熱)÷ 外皮面積 ✕ 100

①窓の日射取得熱(D) = 窓面積 ✕ 方位係数 ✕ 窓の日射取得率 ✕ 日射遮蔽物(取得日射熱補正係数)

②窓以外の日射取得熱(A+B+C) = 各外皮面積 ✕ 方位係数 ✕ 熱貫流率 ✕ 0.034

という計算式で求められます。

引用:学ぼう!ホームズ君

「取得日射熱補正係数」と「方位係数」は、暖房期と冷房期で太陽位置が異なる関係で、係数が変わってきます。
そのため、ηAC値とηAH値をそれぞれ計算しなければなりません。
ηAC値は小数点第2位以下を切上げ、小数点第1位までとします。
ηAH値は小数点第2位以下を切り捨て、小数点第1位までとします。

窓以外部位の「取得日射熱補正係数」は、日射熱の影響が少なく、日除けが無いものとし、暖房期・冷房期とも係数を1(無視)として計算することができます。
窓以外部位は、屋根(天井)・外壁・ドアなどそれぞれ計算して合計します。

また、ηAC値ηAH値を良くするための設計項目は、真逆の関係にありますので、一方に偏らないように注意が必要です。

ηAC値
ηAH値
  • 窓面積が小さいほど有利
  • 窓の日射取得率が小さいほど有利
  • 庇の補正係数が小さいほど(庇が長いほど)有利
  • 窓面積が大きいほど有利
  • 窓の日射取得率が大きいほど有利
  • 庇の補正係数が大きいほど(庇が短いほど)有利

Q値・UA値・ηA値の基準

UA値の基準

各地域の外気温の傾向や使用されている設備機器などの実態を踏まえ、全国を8つの地域に区分しています。
8つの地域区分は、下図の通り色分けされた日本地図で、おおまかに確認できます。

また地域区分ごとにUA基準値が定められており、その値以下のUA値であれば「断熱性能の高い住宅」と言えます。H28省エネ基準、ZEH、HEAT20、それぞれの地域区分ごとのUA基準値は次の通りです。

引用:国土交通省株式会社芹工務店

Q値の基準

省エネルギー基準が改正されて(平成28年基準)以降、Q値に代わりにUA値が採用されため、現在では国によるQ値の明確な基準はありません。

しかし、換気システムも加味したうえでの断熱性能の評価が知りたい場合には、Q値も参考にするのが重要です。

一般的に、各住宅会社のQ値は、2.7〜1.0〔W/㎡・K〕の範囲内にあります。

ηA値の基準

外皮性能基準では、ηAC値のみ5~8地域に基準値が定められています。
ηAH値の基準値はありません。
ηAH値は、ηAC値と併せて一次エネルギー消費量(BEI)を計算するときに使用します。

スクロールできます
地域1~45678
基準値(ηAC値)なし3.02.82.76.7
H28年省エネ基準におけるηAC値の基準

日本の水準は、世界基準と比較するとまだまだ甘いものとなっています。
あくまでもこれは最低基準と考え、できるだけ低い数値を目指してください。

まとめ:施主目線で思うこと

世界と比較してみる

他の記事でも書いたのですが、日本の断熱基準は世界に比べ、まだまだ劣っています。

世界と比べて日本の住宅性能は20年以上遅れていると言われており、UA値を比較してみると、アメリカは0.43イギリスは0.42ドイツは0.4フランスは0.36、と法律で義務化されており、HEAT20 G2レベル(6地域:0.46以下)に相当します。

目指してほしい数値

UA値・Q値

上記のように、世界基準ではUa値はHEAT20 G2レベル(6地域:0.46以下)が最低基準(義務化)レベルでしたので、最低でもこのレベルを推奨します。

カーボンニュートラルの観点からも、これから日本の基準レベルも段階的に上がっていくことが予想されますので、未来を見据えた基準を目指すことをおすすめします。

Q値⇔UA値換算ツールに「Ua値:0.46」を入力して変換すると「Q値:1.6」となりますので、Q値は1.6以下を推奨します。

建築業界では有名な松尾和也先生も「1.6以下」を推奨されています。

ηAC値・ηAH値

ηAC値<ηAH値になるのが基本で、高性能住宅を建てている工務店では、ηAC値が1.0以下ηAH値が2.5以上あたりを目標にしてるところが多いようです。

これはパッシブ設計といって自然の力を利用した設計をしないと、なかなか実現することは難しいです。

実際に建築する土地に対して、太陽の角度や方角なども考えて設計してくれる住宅会社を選びましょう。

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